父はそんな母をほったらかしだった。


父は優しい方だ。

母と比較して。


母はすべてを否定するが、父は聞いていたのか聞いていなかったのかいつも頷いてくれた。


父は愛想がよく、とても優しい顔をしていて
他人から見れば本当に
いい人で
いい父で
いい夫、に見えたらしい。

父が家で笑顔を見せる事は殆どなく表情は貧しいものがあったが、
一歩外へ出て人前に立つと忽ち目尻を下げ、まるで自分は子煩悩であると周囲に見せつけるように優しく私達に話しかける。


そのおかげで同級生や先生、近所の人達からは仕切なく言われた。


「優しいお父さんでいいね」


父の子供としてはそう言われて嫌な気分にはならない。



だけど実際は違う。

優しいのは事実かも知れない。

だけど、私や弟を連れて出かける先はいつもパチンコ、競馬場、競輪場。仕事場。

たまに行ってもお金のかからない公園。


行き先はいつもそんな場所ばかりだった。