消毒が終わり、男の人に聞かれた。



「こんな所で何してたの?こんな時間に」



「ちょっと色々あって…行く場所がなくて…」


そう答えると男の人はこう誘ってきた。



「でもこんなとこに居たら危ないよ?行く場所ないなら俺達と遊ぶ?今からカラオケ行くとこだけど。」



「あ、でも私…」



顔は痣だらけだし、
お金も持っていなかった。



「大丈夫。おごるよ。危ないし、一緒に行こうよ?」



断る理由も、行く場所もない私は彼等の車に乗った。



その時は警戒なんてしてなかった。


ただ、誰でもいいから傍にいて欲しかった。


忘れたかった。

何もかも。



カラオケに着いてからも彼等は優しかった。


お酒を奨められてチューハイを飲んだ。

煙草を貰って、初めて煙草を吸った。



美味しくもない煙草を何本も何本も吸い、美味しくないお酒を何杯も流しこんだ。



カラオケで一回も歌う事はなく、ただ馬鹿みたいに騒ぐ彼等をずっと見ていた。


気付いた時にはもう
朝が近づいていた。



「そろそろ帰ろうか?」



その声でカラオケを出て車に乗る。


空はまだ薄暗い。


ワンボックスの車の1番奥に座った。



「家どこ?送るよ」



「あ…はい…」



帰りたくない…―――



―――――――――帰りたくない




覚えているのはそこまで。