「……ここは、僕の家だったんだ…」

薄いピンク色をした潤った唇から冷たく澄んだ言葉が飛び出した。




…………!!

突然の証言に驚いた。


「……え?!ホントに…?」
確認のためにもう一度聞く。


「…うん。そうだよ。」
男は人形のようにコクリと頷いた。


ギャラリーがざわめき始める。


無理もない…
目の前に家を失った者がいる訳だ…

「……少し聞いてもいいかな…?」
「…なぁに…?」
「…歳はいくつ?」
「……19。」

男は現場を見ながら言った。



風貌は高校生に見えたが、男は成人前の大学生だった。



「……名前は?」
「………前田 翔(まえだ しょう)……すぐ近くにある前田建設が父の会社だよ…」


桜田はサラサラと自前の手帳に書き留めながら、何の動揺もなく淡々と証言する前田を不気味に感じた。



「……あぁ…前田建設の…!」
ギャラリーの間では名が通っているらしい…



前田建設は今いる裏路地をさらに奥へ進むとある。