携帯を両手で持ち、液晶画面の照明を絶やさないようにボタンを連打し続ける…





ワンルームの部屋が幸いして、やっとの思いでベッドに手が触れる…


やはり彼はいない…





そのまま空っぽのベッドに腰を下ろし、いつも請求が来る電気会社を携帯で調べる。




すぐに電話番号が表示され即座に『通話ボタン』を押した…




トゥルルルルル…




『……はい、株式会社電光、担当の『中川』です…。』
ハキハキとした声の女性が応えた。


『…あっ…あのぅ、停電の復旧ってあとどれくらいかかるか知りたいんですけど…』
『……停電……ですか?』
『…はい!ブレーカーが落ちてないのに電気が点かないんです…』
『…少々お待ちください…。』
電話の向こうでキーボードを叩く音が聞こえる。





長い沈黙の後、女性は何かに悩みながら言った。

『…………失礼ですが、お名前と住所をお伺いしてもよろしいですか…?』