もしも、世界が美しかったら




一日中ベットの中にいたけど、
一睡もできやしなかった。

移植手術を受けた夏琅も、まだ目を覚まさないらしい。


そして、今……俺は相原家の前に立っている。

何十年と通い続けた家なのに。

何千回と押してきたこのインターフォンなのに。

俺はこれでもかというくらい、
緊張した。怖かった。

愛輝が部屋を飛び出してから、
愛輝とは一回も会っていない。

明美ちゃんからメールが来てて、家には帰ってきているらしい。

俺は心配だった。

愛輝は由輝が大好きだった。

悔しいけど俺なんかより、
何倍も何百倍も大好きだった。

愛輝にとって由輝は世界でいちばん大好きで、大切で、必要な人だったんだと思う。

愛輝はそんな由輝を失って大丈夫なんだろうか?

たぶん大丈夫じゃないと思う。

でも……

―――もし俺がいなくなったら、利玖が愛輝を守ってやって。

由輝と、約束したから。

俺が…俺が愛輝を助けるんだ。


ピンポーン

「はい?」

「利玖だけど…愛輝、いる?」

「部屋にいるわ…入っておいで」

「うん」

入って靴を脱ぐと、明美ちゃんがリビングから顔を出していた。