もしも、世界が美しかったら




「由輝、ね……バイクで…ここに来る…途中…に………トラ…ックと……ぶ…つか…って……ッ…」

段々と途切れ途切れになり小さくなっていく明美ちゃんの声。

泣き崩れる明美ちゃんに、愛輝がピクッと反応した。

しかし「お母さん」と呼ぶ声は
震えていない。

愛輝の頬は濡れていなかった。


「私、信じないから」

その声は残酷なくらいに、
まっすぐで…凛としていた。

それだけ言い放って、愛輝は明美ちゃんの呼ぶ声も無視して部屋を出ていった。

俺は愛輝を追いかけられずに、
そのまま立ちつくしていた。

聞こえるのは明美の泣き声だけ。

―――私、信じないから

……愛輝の気持ちもわかる。

俺だって信じられるかよ。

今、目の前にいる由輝だって
いつもの寝顔と変わらない。

……のに、触れた頬は冷たくて。

現実なんだと思いしらされた。

――――由輝が…死んだ


俺の頭には昨日の事が浮かんだ。



―――――――

―――――

―――




「由輝!」

「あ?利玖…」

夜。ちらっと部屋の中から、
ベランダで空を見上げている由輝が見えて、俺もベランダに出て由輝に声をかけた。