ライブハウスの中では、エイジの周りにはたくさんの仲間がいるようだった。

でも仲間といっても、自分の父親の方が年が近いんじゃないかってぐらいの、大人の人ばっかり。


ちゃっかりどこからかもらってきたビールなんかを飲んでる奴を横目に見ると、大人にまぎれていてもどこか幼げな雰囲気があって、教室で見るエイジの姿とは違ってなんだか微笑ましかった。





一人で物販のブースで、今日出演バンドの音源をチェックする。

売り子をしていたのは、チェリコのメンバーで、ちょっと顔を知っていたから声をかけてみた。

みんな気さくに話してくれるし、レコードとTシャツを買うとサインまでしてくれて、いっしょに写メで撮影もしてくれた。


ライブが楽しみになってきたな・・・





そんなことをしていたら、エイジもそばにやってきて
「そんなの買って、ライブ中どうすんだよ。」
って笑われた。

そうだ、レコード持って暴れられないもんな・・・
あわててロッカーを探して、一番奥にやっと1個見つけたところに荷物を入れた。






ライブスペースの方にいくと、ロックなDJがかっこいい音楽をガンガンまわしていて、思わずそれにつられて体も動いてくる。

早く生音が聞きたいなって思いながら、エイジと二人でドンドン前のほうに人を掻き分けていった。





会場が暗くなり、軽快なSEがかかると同時に、チェリコのメンバーが登場する。

軽快なアイリッシュパンクのメロディーにのせて、僕の身体も自然にリズムを刻んで踊ってた。

一通り踊って、めちゃくちゃにモッシュでもまれて、汗だくになっていったん後ろに下がる。


エイジはそんな僕を、笑って見ているだけだった。



「踊ったりしないの?」

ふとそう聞いてみたらにやりと笑って、

「最後に体力を温存してるんだ。」

なんて言って、また知らない兄さんたちからビールをもらっていた。