どういう基準だったんだか、僕の席は廊下側の真中で、エイジの席は窓際の一番前だった。

左斜め前方に自然に目がいくと、ずっと窓の外をぼんやり眺めている奴が見える。


他のクラスメイトとは違う、異様な雰囲気のある奴だった。

真黒な黒髪を、スプレーで無造作に立ち上げて、何に不満があるのか細い目をもっと細めて、なにかを睨んでいるような表情をしていた。



なんかシド・ヴィシャスみたい・・・

きっとこいつもパンク好きなんだろうな・・・

勝手にそう思ったら、ちょっとワクワクしていた。




クラスの奴らは、ずっとエイジのことにびびって、話し掛けるような奴はいなかった。

べつに、先生に反抗的だとか、乱暴なことをするとか、そういうことはいっさいないのだけど、黙ってそこに奴が座っているだけで、何となく威圧感がある。
成績だってそんなに悪くないみたいだし、授業だって休まず受けているのにね。


何でみんなが奴を敬遠するのか、ちょっと不思議だったけど、
みんな未知の世界に触れることが嫌なんだって、あとから気が付いた。

同じようなパンク好きの僕には理解できなかっただけなのかもしれない。




僕は甲子園に行きたくて、そういう実績のある高校を選んでこの学校に入学した。

自宅から電車を乗り継いで1時間近くかかる場所だったし、同じ中学の同級生もいなかったけど、それでも僕は人見知りなんかしなかったから、自然とつるむ友達は増えていた。


野球部に入ってからは、放課後は部活に明け暮れていて、週末になると高校の友達以外の仲間とライブに出かけていた。


どこに行っても、僕は友達や仲間がいる・・・



でも、エイジはいつも一人で楽しいのかな?

一人でいるのって、どういう感じなのかな?



可哀想とか、淋しそうとか、そんな同情の気持ちではなくて、純粋に奴のことに興味があって、今日初めて話しかけてみたんだ。