母さんは、ずっと一緒にいると、新鮮味がなくなるとかなんとか、いろいろいい訳言ってたけど、要するに父さんが甲斐性が無いだけなんだってのが事実。





『ねえエイジ、小鹿のバンビはさ、お父さんと一緒にくらさなくても、
立派にお父さんの役目を引き継いで、森の王になったんだよ。』




母さんは、やけにその絵本が大好きで、小さい頃は何度も読み聞かされていた。


父親がそばにいなくても、ぜんぜん不自然じゃないんだって、そう言い聞かせたかったのかもしれない。

実際そういうことで悪口を言う奴がいても、俺は堂々と無視していたから、いじめにあうようなこともなかったしな。







「それにしてもお前さ、高校に入ってから、やたら目つき悪くなってきたよなw
やっぱテツさんの子だなー」

ビールを受け取りながら、そんなことまで言われて、ちょっとイラッとした。




「あ、ゴメンゴメン、怒った?」

ぜんぜん悪ぶりもせず、兄さんは笑っている。




ビールをいっきに飲み干して、ありがとうと御礼を言ってから、連れを探してくると俺も物販の方にレンを探しにいった。