鉄さんの居酒屋を出て、僕はカオリさんを担ぎながらよろよろと歩いていた。

酔っ払ってると、なんかいつもより重く感じるのは何でだ・・・あの時は軽い気がしたのに。


「レン~♪」

なんかじゃれてくるのも嬉しいようなめんどくさいような、複雑な気分。

そんな僕達を、エイジがニヤニヤしながら見ている。

「ホントカオリンは、めんどくさいな。」

「もう、そんなこと言わないでよ、カオリさん大丈夫?」


モモはしきりに、背中を擦ってあげたりしてるけど、大丈夫大丈夫なんて酔っ払って彼女は答えているばかりだ。



「ああ、モモ、僕カオリさん送ってそのまま泊まるから、お母さんに言っといて。」


駅前まで着くと、そういって二人と別れて、僕たちはいつもの帰り道を中野方面に歩いていった。



「レン、私これでよかったのかな・・・なんかまたですぎたことしちゃったかな・・・」


さっきのことを思い出して、また泣き出すから、もう家帰ってからにしてよって言って何とかなだめながら足早に彼女のアパートに向かった。



「ほら着いたよ、鍵開けてください。」


カオリさんはふらふらしながらも、かばんからしっかり鍵を出して、エントランスの暗証番号を押してから自室のドアを開けた。



「ただいまー」

カオリさんは、誰も居ない部屋にもそう声をかけて、電気をつけてさっさとソファーに座って伸びている。



「もう着替えてすぐ寝ちゃえば、なんか飲む?」

勝手知ったる彼女の部屋で、冷蔵庫をあさりながらポカリを出してあげると、ありがとうっていいながら一口飲んでくれた。



なんだか嫌な視線を感じて、部屋の壁の方を振り返ると、新しいアキラのポスターが張ってあって、一瞬でなんか嫌な気持ちになる。

僕が来るときはいつもはずしてたはずなのにな。

この前サマソニで会って、余計ファンになっちゃったんだろうか?



改めてヤツの全身を眺めると、やっぱり僕よりずっとかっこよくて、身長も高いし顔も整ってるし、そういえば私服もかっこよかったなって思った。
歌もビトに負けてなかったし、ダンスもトークもいけてたな・・・

僕は、こんなヤツと張り合わなきゃいけないんだろうか?
一気に自信がなくなってくる。


「ごめん、はがすの忘れてた。」


カオリさんは、ふらふらしながらそれをはずそうとしてくれたけど、今日はもういいよってそのままにさせておく。



「えーだって、なんか見られてるの恥ずかしいし。」

「みてねーわ、ただのポスターだわ。」

そういって笑って返すけど、本心はだったらはじめから張るなって思っていた。