すべてのライヴが終わって、僕達は毎年恒例の幕張プリンスホテルに泊まることになっていた。

去年と違うのは、エイジとカオリさんが居ることと、ビトがいっしょの部屋じゃないってこと。

でも、ビトもアキラも違う部屋に泊まるって、さっき聞いていた。


「なんか凄いね、いつもこんなとこ泊まってたんだね。」

カオリさんに、さすが芸能人の息子とか何とか冷やかされながらホテルのチェックインを済ませる。


部屋は二つとってあったけど、もちろん女子と男子で別れて泊まることになっていた。



カオリさんはちゃっかり近くのコンビニでビールを何本かかって持参している。

まだ呑むんだなってちょっとおかしくなったけど。



いったん部屋に入ると、今日一日中炎天下の中だったので、汗臭い身体を流すべくエイジと交互にシャワーを済ませた。


「なんか腹減ったなあ・・・」

冷蔵庫をチェックしたけど、べべさんが部屋を用意してくれたせいか、アルコール類は入ってなくて、ソフトドリンクばかりだった。

「お前いつも腹空かせてんのな。」


エイジにそんな風に笑われたけど、やつも腹減ったって言うのでルームサービスを頼むことにする。


「ついでだから二人も呼んで一緒に食べよう。」

僕がカオリさんにメールしていると、ドアのチャイムがなって、エイジがドアのところまで確認にいってくれた。



「ちょっとお邪魔していいかな?」


やってきたのは、ビトとアキラで、寂しいから打ち上げしようとか何とか言って、こっそりビールを持ってきてくれていた。




「今日で夏フェスツアーも最後だからさ、やっと終わったって感じだよ。」


ビトがそういうと、とりあえず四人でカンパイした。


エイジが大丈夫なのかよってちょっと心配している。


「ちょっとぐらい平気でしょ、カオリさんもくるし。」


そういえば、ビトとアキラが飲んでるのなんてはじめてみるなって、不思議な気分だった。




「レン、モモちゃんも来るよね?」

ビトはモモになんか用事があるっぽくてそんな風に聞いてくる。


「さっき呼んだから、もうすぐ来ると思うよ。」


その間に、僕は適当にルームサービスのピザをいくつか頼んだ。



「エイジ、なんかゴメンな・・・」

「なんのことだよ?」

「さっきの僕のファンが、モモちゃんに嫌がらせしたって事とかさ。」

「そういうのは、モモに謝ればいいんじゃね?あいつも気にしてねーよもう。」

ビトとエイジは昼間の一件で話し始めていた。


「みんな居ていいからさ、モモちゃんと話させてくれるかな?少しでいいんだ。」

いちいち許可取らなくても、話せば言いじゃんって思ってたら、エイジも「そんなの普通に話せばいいだろ」って笑って答えている。


「幼なじみなんだから、普通に話して当然だろ。もう気にしないっていってたのビトじゃん。」


「そうなんだけどさ・・・」

くちでは簡単に言えるけど、きっとまだわだかまりはあるんだろうなってなんとなく僕でさえ思った。



四人でビールをひと缶づつ空けると、さっさとかたずけて冷蔵庫にあったコーラかなんかを出してみんなで飲んだ。

そうこうしているうちに、カオリさんとモモもやってきて、ちょっとだけ気まずい雰囲気になる。