・・・って何でこういうことになってんだろう。


僕はカオリさんと、何故かアキラと、ビーチステージの方に来ていた。


カオリさんがおすすめの、レゲエポップバンド。
夕日を眺めながら聞くのにぴったりな感じのバンドで、何だか和む。


カオリさんは、相変わらずビールを飲みながら、まったりとした曲で踊っていた。


僕とアキラは,ちょっと離れたところに座って、コーラなんか飲みながらその様子を眺めていた。



「いつから付き合ってんの?」

いきなり聞かれるから、もう2ヶ月ぐらいかなあなんて普通に答えていた。

「はじめ姉ちゃんかと思った、やたら親しいから。」

ああやっぱ、僕達はカップルに見えないのかと思うと、ちょっとしょげる。

「よく言われるよ・・・」


そういえばアキラは、さっきの子とどういう感じなんだろう。

「百花ちゃんとは親しいみたいだね。」

聞いちゃいけないかなと一瞬思ったけど、考えるのめんどくさくなって普通にきいちゃっっていた。


「あいつはビトの追っかけだからな・・・」

ビトは相手にしてないみたいだけどな、根性あるよな。


「なんか微妙な関係だね。」

まあななんていって笑っている。


「どうせ今は、女とつきあえないしな・・・どうこうなるつもりもないし。ちゃんとファンの子達にむきあってたいし。ただ、ビトがもうちょっと安定してくれるといいんだけど。」


夕日が沈んでいく海を眺めながら、ゆったりとしたレゲエミュージックが流れていく…


なんで男子二人でこんなの見てんだよ…






「あの、写真とらせてくれない?」

サマソニの記録係みたいなカメラマンのひとがいきなり来て、僕らにそう言った。



「アキラ事務所NGなんじゃないの?」

そう聞くと、最近は大丈夫になってきたって言う。


「ちょっとマネージャーに聞いてみるわ。」


カメラマンのひとは、僕たちが良い感じだったんでどうしても撮りたいとか言って、しばらく待ってくれている。


「あの、名刺もらって良いですか?」

アキラも自分の名刺を出して交換すると、事務所のOKがでたとかで、早速撮影してもらった。



夕日をバックにのんびりステージを眺めてるキッズ達みたいな、そんな絵らしい。



「ありがとう、良い絵が撮れたよ。早速公式ページにアップするから、あとで見てね!」

その人はお礼をいうと、ステッカーとタオルをくれた。


「なんか有名な人っぽいな…」

名刺を見せてもらうと、聞いたことあるようなひとだった。



「俺、ビトに比べたらまだ仕事少ないからさ、なにかきっかけがあればどんどん前に出ろって言われてんだよな。」


そういえばビトは今日も、海外からの取材とか色々こなしてるらしい。
べべさんの息子だと、それがらみのことが多いんだろうな。

親子共演って、ネタになるもんな。



「そういえばさ、なんでお前はアイドルやらないわけ?会長イチオシだったじゃん。」

そんな昔の事、今さら言われても困るわ…


「軽い気持ちならやるなって、父さんに反対されたんだ。」


「ふぅーんそうなんだ、お前はその程度だったんだ。」


そうだよ、その程度だからやってないんじゃんかよ。


「俺は、お前らとやりたかったけどな…」


あの時のアキラの事を思い出すと、俺とやりたいなんて思っても見ないけどな。

「さんざん親の七光りってばかにしてたくせに。」



「ビトは凄いヤツだってのは、一緒にいて嫌ってほどわかったけど、お前はな…
二宮さんのDNAがどれだけのものか、見てみたかったな。」


なんでみんなそんなに、僕にそういう期待をするんだろうな。
カズ叔父さんもそういえば断ったっていってたな…


「それとさ、やっぱお前は向いてると思うぜ。なんか周りをなごます、不思議なオーラがあるもん。会長がさあの時焼肉屋に連れてきてたの、意味があったんだなと今はわかる。おかげでそんなに重い空気にならなかったしな。」


レゲエバンドは、ラストの曲を演奏しはじめて、夕日はあっという間に沈んでいってしまった。



「僕は、カオリさんと別れたくないもん。野球もやめたくない。」


一気にコーラを飲み干すと、僕はカオリさんの踊っている隣そばまで行った。



「ねえ、レンも気に入った?良いでしょ…」


僕はギュッとカオリさんを後ろから抱き締める。
アキラがそばにいるせいもあって、彼女はちょっとじたばたしてる。


「うん、好き…」


カオリさんの好きなものは、みんな好きになりたいなぁ…


「恥ずかしいよ…」


彼女はそういうけど、そのままずっと僕の腕になかにいてくれた。