秋山は、秋葉原にいくんだと言って、目黒駅で別れた。

僕たちは、山手線にのって新宿方面に向かう。

よく行くバッティングセンターは、神宮の方。トレーニングがてら、代々木辺りからランニングしていこうかななんて考えていた。


「モモがあんな愛想振り撒いてたのって、俺が思ってたのよりずっと深い意味があったのかもな…」

エイジが車窓を見ながら、呟くようにそんなことを言った。


「そういえば、べべさんもそんなこと前に言ってたよね、あれがモモの優しさなんだって。」



エイジと会ってからのモモは、なんだか色々なことがあざとくなくなった気がする。

素直になった気がするんだ。


「俺と居るとさ、すぐ泣くし怒るし、よく笑うし、それが普通だと思ってたけどな。」


「それって、あのモモが一番自然でいられるってことでしょ?」


ああ、モモはホントに好きなんだなって想う、ビトの時とは明かに違うんだ。


「ビトにもさ言われたよ、もう大丈夫だなってさ。なんのことだか始めわからなかったけど、今なら何となくわかる。」




あいつは中学の時は、みんなのアイドルだった。クラスの男子や先輩や後輩にも大人気で、いつも教室に見に来る男子は多かったし、女子ともひがまれないように、ちょっとバカなこともいったりして、みんなと仲良くやっていた。

ビトのことがあって、他校から来るビトのファンに嫌がらせされてたときも、みんながかばってくれていた。

それは、必死にモモが自分を守るためにキャラを作っていたことなんだよな。

それをわかっていて、それでも守ってくれたのが、秋山とかのファンの男子だった。


「好きな女の子に彼氏がいるってわかってても、それでも好きで応援してくれてるって、スゴいよな…」

そういう気持ち、モモに意地悪してきたファンに教えてやりたいわ。






「俺が好きになったモモは、そういう子じゃなかったけどな…」


それってどういうことって聞いてみる。


「もっとパンクなやつだと思った。」

「えーそんなハードな感じかな?あんまりパンク聞かないよ、モモは。」

そう答えると、音楽のことじゃないって言われる。

「もっと精神的なことな。はじめ凄い睨まれて、なにかにいつも反抗してる奴って気がした。」


ただのぶりっ子だったら興味なかったって、そんな風に言うので、そうだったかなとあの時のことをぼんやりと思い出した。


スタートから違っていたんだな、二人は二人だけの特別な何かがあったんだろうなと、僕にはわからないけどそんな気がした。