一通り踊って、汗まみれになって、席に戻ってドリンクを飲んで休憩する。

トイレに行くたびに、エイジとモモを見かけて、チョコチョコ声をかけるけど、相変わらずずっと二人はそこでそうしたままだった。


夕暮れになるとだんだん人気バンドがメインになってくるからもう前の方には行けなくなってきて、僕達も後ろの方で見ることにした。

ビール片手にずっと広いスペースで踊っていたカオリさんが、やっと僕のことを思い出してくれたのか、自然と隣に座っていた。

「なんかさ、みんなと居ると照れるよね。」

羨ましそうに、モモとエイジの後姿をぼんやり眺めている。

「私は無理だなあ・・・」

そんなことを言うから、僕もあいつらの真似をして、カオリさんを後ろから抱きしめてみる。

「ちょっと、レン何しちゃってんのよ・・・」


「いいじゃん、カオリさんは僕の彼女でしょ。」


彼女の髪の辺りから、いつもの甘い香りがしてきて・・・


「なんか・・・お腹すいたなあ・・・」

思わずそうつぶやいてしまったら、思いっきりカオリさんに笑われた。


「なんか食べる?」

そういって、かばんから適当にポテチとか出してくれるので、ありがとうって言いながらいっしょに食べた。



「そういえば、さっきヒロキに会っちゃった。」

カオリさんはちょっと寂しそうに言うから、僕も会ったよって答えた。

「なんだかなあ、もうどうでもよくなってたなあ・・・心から。」

それなら良かったって思うけど、なんだか元気ないような気もする。



「ちゅーかさ、思い出すたびムカついちゃってさ、2度と会いたくないって思ってたけど、好きな音楽かぶってると会っちゃうよね~」


「なんか言われたの?」

気になってそう聞いたら、なんでもないって答えてはくれなかった。


「ヒロキさんかっこいいよね・・・アキラと同じくらい。」

ついそう嫌味を言ってみたくなった。

「かっこよくないよ、アキラの方がずっとかっこいいに決まってんじゃん。」

さらっとそういう風にいうからなんか凹む。

「それ僕の前で普通言うかな?」

そうやってすねていると、カオリさんは急に大声で笑い出した。


「何いじけんてんの、レンの方がアキラより可愛いよ!」

「もう、可愛いとかじゃなくてさ!」


あたりは大分暗くなっていて、僕達の周りには余り人も居なかった。

みんな真剣にステージに見入っている・・・


「レンは、あの時は最高にカッコいいよ。」

囁くように言うから、ちょっと聞こえなかったけど、耳まで真っ赤になっているのがわかる。




だって、キスをしたらとても熱かったから。