「ちょっと待って、何でそんなこと知ってるの?」

ちょっとだけ声のトーンが低くなる。

きっと二人だけの秘密のことだったんだろう。

でもそう教えてくれたのは、ビト本人からなんだからな。



「どうせ私の悪口ばっか言ってるんでしょう?」

俺たちが友達として会ってるのが気に入らないのか、ちょっとふてくされているようだった。
別に男同士だし、俺そっちの趣味ないし、いいじゃねえかと思ってちょっとめんどくさいなとも思うけど・・・

「お前に悪いことなんてないんだから、そんな事話すわけねーだろ。」

こいつにはちゃんと話しておかないとわかんないだろうなって思うから、きちんと伝えようと思う。



「俺だってさ、気にしてるんだぜ。お前ビトが嫌いになって別れたんじゃねーだろ?」


あれだけ仲のよかったカップルなんだからさ、また何かあれば心が変わるかもしれない、それが不安で不安でしょうがないけれども、


「エイジ君もそうでしょう? 私の他にもいるでしょう?」

モモは泣きそうになりながらそんなことをいきなり言うから、すっかり忘れていたことに気付く。



そういえばこの一週間、リンダのことを思い出すことはなかったんだ・・・



ああ、俺も少し変わったんだなと、モモの泣き顔を見ながら、なんだか少し嬉しくなった。


「もう、泣くなよ・・・」

モモの右手を握り締めて、そっと頭を撫でてやる。


「俺たち、そういうとこきっと同じなんだよな・・・
ただ、おれはさ、今はモモが好きだしずっと一緒に居たいし。あれからあいつには会ってないし・・・」


そう、だけど心はきっと変わっていく、この先どうなるかなんて誰にもわからないのだから。


「でもさ、俺はいいよ。お前がビトが好きなら、また戻ってもいいよ。」

俺はモモが幸せならそれで良いや、ずっと笑っていてくれるのなら。



「そんなこといわないでよ、私は戻らないから、私だってずっとそばに居たいのに・・・」

そんな風に言ってくれて、綺麗な涙をぽろぽろと流した。




「モモは、泣いたり怒ったり忙しいな。」


俺はたまらなく嬉しくなって涙をぬぐってやると、


彼女の唇に、そっと触れるようにキスをしていた。



ああそうか、こうすれば大丈夫か・・・




モモはびっくりしてやっと泣き止んで、やっと笑顔に戻ってくれた。


「全部好きだけど、やっぱ笑ってるほうがいいな。」


そういってやると、いきなり俺をぎゅっと抱きしめてくれた。


「ちょっ、おい、さっき言ったろ・・・」

一瞬ヤバイって思ったけれども、


「ハグはダメって言ってないもん。」

そんな風に言ってくるモモに思わず笑ってしまって、俺もきつく抱きしめ返していた。




「なあ、もうおねがいだから、あんなエロいキスしてくんなよ。」



観覧車がてっぺんまで上りきると、ゆっくりと今度は降りて行く・・・




きっと大丈夫だな、そうだよ、ゆっくり大人になろう。

まだきっと時間はいっぱいあるさ・・・