「何だよ、お前も飲めるんじゃん。」


なんだか、アルコールの力でもかりなきゃやってられないって思っていたから丁度よかったけど、ビトも同じだったんだな。


「俺そんなに真面目に見えるのかなあ・・・」

二人であっという間に一缶づつビールを空けると、すぐにお代わりも持ってきてくれて、ついでに適当につまみなんかも用意してくれた。



「この前言われたんだ、ストイックな俺が好きだって、女の子に。俺そんなんでもないのにな・・・」


まあでも、普通の人に比べたら、かなりストイックな方なんじゃねっていってやったら、そうなのかなってぼんやりとしている。


なんだかこういうビトの姿は、初めてみるな、酔っ払ってるんだろうか?




「で、なにがあったの?」


どうせモモの事なんだろうって思っていたんだけど、奴はまったく違う話をしだした。





「エイジはさ、好きじゃない子とやった事ある?セックス。」

いきなりそう聞かれて、一瞬戸惑った。






「それは、ないな・・・
何だよ、また前みたいなことがあったのかよ。」



つくづくこいつは、そういうことに関しては、運がないんだろうか。
まあでも、いままでモモしか好きじゃなかったって言ってたから、他の誰とやっても同じなんだろうな。




「じゃあ、エイジのセフレだった人って、やっぱ片思いだったわけだ。
何だか、そういうのもいいよね・・・うらやましいよ。」






「俺は結構辛かったけどな・・・お前とモモの方がよっぽどうらやましかったよ。」


お互いないものねだりばっかりなんだな、どこまで行っても。







「この前さ、大嫌いな女とやったんだ。やけくそになってさ。
それがどうしても、モヤモヤしまくって、誰に話していいかわかんなくってさ・・・」



ビトは俺に涙を見せないように、ちょっとだけ泣いてるようにも見えた。

うつむいてうなだれるビトの様子は、長い前髪でよく見えなかったから。





「相方のアキラにはもうばれてるけど、やつには絶対相談したくないし、もうどうしていいかわかんなくて。このままどんどん落ちていきそうな気がするんだ・・・」



新しいビールを飲んで、ふと顔を上げたやつの瞳を見ると、やっぱりモモとすごしていたときとは違う。


もうすでに、闇に落ちきっているような、冷ややかな空気を感じた…