「ただいま~ エイジーお友達来てるの?」

そういいながらキッチンにくると、モモの姿に母さんはちょっとびっくりしてた。


「すいません、お邪魔してます。」


モモは母さんに丁寧に挨拶すると、いつものアイドルスマイルでにっこりと微笑んだ。

「あら、えっと・・・モモちゃんだっけ?レン君の妹の?」

そういえば、母さんも前に、レンのとこの花屋で飲んでた事あったんだっけ。もうずいぶん前のような気がしちゃうけど、一週間前か。


「すいません、勝手にキッチン使わせてもらいました。」

そんな風に謝ると、母さんはいいのよーなんてやたら嬉しそうにしている。


「あ!」

モモはいきなり何か思い出したように不安な表情になった。


「もうすぐ門限だ、帰らなくちゃ・・・」


バタバタと帰る準備をしだしたので、俺も送っていくからと新しいTシャツに着替えた。


「またいつでもいらっしゃいね~」


母さんはすっかりモモの事が気に入ったようで、玄関で機嫌よく送り出してくれた。






「ヤバイ、もう八時過ぎちゃうよ・・・」

モモはしきりに携帯の時間を気にしている。

「俺一緒に謝ってやろうか?」

そういったら、絶対だめって念を押された。


「この前お父さんにこっぴどくしかられたばかりなんだもん、彼氏なんか連れてったら、とんでもない事になるよ。」


はは、そうか、俺は彼氏なんだな・・・

まんざら悪くないかもしれない。






この前と同じように、駅の改札でバイバイすると、モモは大きく手を振って、ジャンプまでしながら足早に商店街を小走りに帰っていった。


ついこの間見た、あの切ない風景を上書きしてくれるかのように。