着替えるふりをして着ていたシャツを脱ぎ捨てると、カオリさんの手をとってこちらに引き寄せる

「お願い、ヤラセテ…」

そう耳元で囁いた。

一気に彼女の顔が耳まで真っ赤になっていく。

もちろん僕もだけれど。


「えっえ、ちょっと待って…」
必死で振りほどこうとする彼女をずっと抱き締めていたかったけど、やっぱり無理にするのはどうかと怯んだ瞬間に、振りほどかれてしまった。


「えっと、ちょっと座ろうか。」

僕の肩に彼女は手をおいて2人で向き合うように、なぜかお互いソファーの上で正座していた。


「やっぱだめ?」

上目使いでモモの真似をしながらそんな風に言ってみたけど、彼女はう~んと腕組みしながら何かを考えている。


「俺まだ初めてなんだ、だから、教えてください。」

カッコ悪いけど僕は必死になっていた。

だけれども、


「残念ながら、私も初めてなもので、教えられません。」

彼女もそんな風にいって頭を下げる。




え?マジで!


「だってカオリさん、彼氏いたじゃん!」

まだバージンだったなんて、それは、喜ぶべきなのかどうなのか、かなり混乱してしまった。


「ヤラセテあげなかったから、フラれました!」

なんてやけくそに言われた。


「だって怖いじゃん色々と、痛かったらとか、妊娠しちゃったらとか、病気移されちゃったらとかさ。元カレはかなり強引な人だったし。」


そういわれて、あっと思い出した大事なもの…

立ち上がって自分の腰ポケットに入っていた財布を出すと、どっかにしまっておいたお守りをひとつだした。

こんなときに使わなきゃいけない、男子の大事なお守り。
保健体育の授業でもらった例のやつ…


「ほら、ちゃんと持ってるし、大丈夫だよきっと。」


必死さが伝わったのか、僕の顔と例のお守りを交互にみながら不安そうに彼女はひとつ頷いてくれた。


「あ、でも絶対痛くしないでね!ほんとマジでマジで。」

そんなこと言われたってわかんないよって思いながらも、許可が出たことを良いことに僕は彼女を抱えあげ、すぐとなりにあったベッドに押し倒していた。

女の子って、意外と軽いんだなと実感しながら。