「好きなバンドが、たまたまおやじのやってるバンドと対バンしてて、
それで何となく見にきてたんだけど、会う人みんなに”テツさんの息子だろ"って言われて、なんか居心地悪かったんだよな…」



持っていたビールのカップが空になっていたので、レンが飲んでいた烏龍茶を飲んだ。

なんとなく、ビールより苦い気がして、思わず顔を顰める。



「へえ、エイジの父さんって、バンドやってるんだ・・・凄いね・・・」

パートはなにやってるのって聞かれて、ボーカルだよって答える。



「ただがなってるだけのハードコアバンド・・・
俺はあんまり好きじゃないけど、結構人気あるみたい。」


リンダは父さんのファンで、それで知り合ったんだって思わずそんなことまで話してしまった。



「じゃあ、親子でライバルってわけだ。」


レンは面白そうに、笑って言うけど、マジで笑い事じゃないんだけどな・・・




「やっぱ、エイジはお父さん似なんだろうね・・・」


そう言われて、思いっきりちげーよっ!て力強く否定した。


顔が似てるのは否定できないけれども、あんな奴と似ていてたまるかって、いつも思う。









「ねえ、好きな人がいるって、どんな感じ?

僕さ、なんていうか、いつも妹がそばにいたからかもしれないけど、年の近い女の子って、ぜんぜん異性として意識できないんだよね・・・

良いなって思うのは、ちょっと年上の人ばっかで、もう絶対無理とか思っちゃって、絶対恋愛まで発展しないの。」



へえーって、今度は俺のほうがレンに相槌を打っていた。


お前ほんとは、女に興味ないんじゃねーのって言ったら、そんなことないんだけどなぁってぼんやりと答える。




「だからさ、なんか好きな女の子とかいる友達とか見ると、羨ましいなーって思う。」




「それはただ、やりたいだけとか、そう言う感じなわけ?」

ちょっとふざけてそうきいてみたら、そうかもねってレンはいたずらっこのように笑った。