カオリさんの部屋は、簡単なオートロックの入り口のある、クリーム色のワンルームマンションだった。
どうぞといわれて、お邪魔しまーすなんて返しながら、色々と回りを見渡してしまった。

入り口を入るとすぐ横がユニットバスで、そのとなりがワンルームにしてはちょっと広めのキッチン。
奥が白い壁のフローリングなんだけど…壁がほぼ見えなくて…

「これ、アキラじゃん…」

壁一面に、ポスターのパネルやジャンボ内輪がディスプレーしてあって、まるであいつに見られてるみたいだ。


「あはは、ゴメン、レンなら気にしないかと思ったけど、やっぱ気になるよね~」

そんな風に笑いながら、いそいそと片付けてくれて、やっとやつの視線から解放された。

「そういえばこの前、アキラと焼き肉食べに行ったよ。ビトとおじいちゃんもいたけど。」

うっかりそんなこと口走ったら、「えー!マジで!!」っと悲鳴のような驚き方をされてものすごい食いついてきてしまった。


「あ、ごめん、なんか飲む?」

僕をテレビの前のソファーに座らせて、彼女は、いそいそと冷蔵庫にのみものを取りに行った。

「あ、何でも良いよ、簡単なので。」

グラスを運びながら彼女は、アキラの話が聞きたくてそわそわしてるようだった。
なんかしょげるな…


「でもなんかやっぱ凄いね、げーのーじんのご子息って… アイドルと友達なんだもんなぁ… で、どんな話するの?」

キラキラしたそんな目で聞かれ、自分がふったくせになんだか言いたくなくなってきていた。
何でここにいない奴に邪魔されなきゃならないんだよ。
別にアキラが悪いわけじゃないけど、無償に腹が立ってやるせない。


「別に、仕事の話ばっかだよ。僕はただ焼肉食べてただけでさ。あいつと仲良いわけじゃないし。」


さっきまであんなに楽しくお散歩できていたのに、一気にあいつのせいで気持ちが萎えてしまった… どうしてくれるんだこのモヤモヤは。

でも彼女はそんなことも気にしてないみたい。

「ちょっと着替えるからあっちみてて。あ、レンも着替える?それじゃのんびりできないでしょ?」

そういって僕にスエットの上下を出してくれた。

「でもホント、今日はよく歩いたよね~足がパンパンだよ…」

彼女は靴下を脱いでふくろはぎをマッサージするように叩いている。

僕は目の前に出されたお茶を一気に飲み干すと、やっと覚悟を決めた。