そこからはしばらく無言で、俺がモモを引っ張っていくように原宿駅に向かった。

もういいや、ここまで付き合ってやったんだから、駅で別れて俺はもう帰ろうと思っていた。


「ねえエイジ君、あの人でしょ?」


駅前の信号待ちをしているときに、モモはいきなりそういった。


「エイジ君の好きな人って、あの人でしょ?ちゃんと教えてよ。」


なぜかモモは、目にいっぱいの涙をためてそんなことをいう。


「そうだったらなんなんだよ・・・」



まずい、結構きつい口調で言ってしまったと気付いたときには、もう遅かった。



「そんなの、やだよー!」

そういいながら、モモは駄々っ子のように泣きじゃくっていた。



ああ、めんどくさい・・・



でもそのまま放置して帰るほど俺は鬼ではないので、どこか人の少ない所を探そうと、そのまま駅を通り過ぎて代々木公園に向かった。




公園のベンチにモモを座らせると、近くの自販機で適当に飲み物を買ってきて、モモにミルクティを渡す。

「もういい加減泣き止めよ、何がそんなにやなんだよ。」

モモの目の前にしゃがんで座り、彼女の顔を覗き込むと、指で涙をぬぐってやった。


「そんなのわかんないよ。って言うかさ、いい加減気付いてよ!」


何の事だかさっぱりわからなくて、やっぱりそう聞き返すとモモはヒステリー気味にこういった。





「好きだからでしょ!」






はあ?俺の事か?

だって、モモが好きなのはビトだろ?





あっけにとられている俺の首筋に、モモは急に抱きついて、一瞬にして唇を奪われていた。


そのキスがやたらとうまくて、リンダとはまったく違う感覚で、

「ちょっと待てよ、」モモを一瞬引き離し、彼女の目を見つめなおした。



「俺だって大好きだよ・・・」


今度は俺がモモに深くキスをしてやった。