オバチャンは少し驚いた表情をしたが、直ぐに元の無愛想な表情に戻り、吐き捨てる様に言った。
「昔の懐かしい名前を、よく知ってるね…
だけど、その名前は17年前に捨てたんだよ」
そして、背を向けて厨房に向かって歩き始めた。
順子は立ち上がると、オバチャンの後を追い掛けた。
「さ、小夜子が…
私の親友の生命が危ないの。
どうか、倉橋さんの力を貸して下さい!!」
額を床に擦り付け、土下座をして必死に頼んだ。
順子とは長い付き合いだが、土下座する所なんて初めて見た…
オバチャンは振り返ると、柔らかい口調で言った。
「気持ちは分かったけど、私はもう引退してるんだよ。
だから悪いけど力にはな――…」
オバチャンは私を見て、動きが止まった。
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