夏休みも近付いた、ある日の事だった――


自宅に帰ると、慌ただしく身支度をする母の姿があった。

母は玄関で靴を脱いでいる私を見付けると、駆け寄ってきて言った。


「お、お父さんが…
工事現場で事故に遭って入院したのよ!!

怪我は大した事ないらしいんだけど…
お母さん、今から様子を見に行ってくるから!!」


え…父が入院!?


父は自宅から山間部に向かって電車で2時間程の場所にある、ダムの建設現場に技術者として赴任していた。


私も一緒に行きたかったが、夜遅くなると学校に影響があるし、サトシの事もあるので留守番になった。


.