私たちの会話は、いつも炬燵中心だったよね。

アナタは黒のカバーがお気に入りで、

そこで食べるミカンが何よりも大好きだった。


そんな独特の価値観を持つアナタを

同じくミカンを食べながら見つめる私がいた。

それはそれは、すごく不自然なようで

でも私たちにはごく当たり前の日常。


今、目の前に詰まれたミカンを眺めて

アナタの得意げな笑顔が目に浮かぶ。


「最大限、ミカンを美味しく食べる為の演出じゃんよ」


耳の奥でこだまする声に押され、

新しい炬燵布団に足を入れ、私はそっと山の一つに手を伸ばした。