‐嫌なヤツ‐



 クラスメートの岸くんはよく人をからかう。授業中でも構わず大きな声で話し、しばしば先生を困惑させた。

 彼のその少ししゃがれた声は、ぼくの心臓を軋ませた。

 平気で人の嫌がることをする岸くんがとても恐ろしかった。

 席替えで近くになると、ぼくは岸くんの格好の標的となった。



 それからというもの少しでも油断すれば、背中に蹴りを浴びせられ、ぼくの顔に向けての寸止めパンチは毎日の日課となっていた。全校集会で体育館へ移動する際、シューズ袋を投げつけられた時には、投げかえして反抗したが、何の効果もなく逆に面白がって何度もやり返してくるだけだった。

 岸くんには心がないとしか思えなかった。