先生の配ったプリントが、一番後ろの席のぼくのところまで廻ってこなかった。先生の数え間違いで、プリントが足りなかったり多かったりすることはよくあることだ。

 プリントはぼくの前の席の湯元さんのところで終わった。湯元さんは後ろの席のぼくには何の素振りも見せず、プリントを折りたたみむと、クリアファイルの中にしまった。

 まるでぼくはこのクラスに存在しないかのように扱われた。

 実際ここ数日間、学校で誰とも喋っていない。

「プリントがきてない人はいませんか?」

 ぼくは手を挙げなきゃ、と思ったけれど躊躇ってしまってなかなかの身体が動かない。夏服に変わったというのに、ぼくは大量の汗をかいている。

「先生、上原くんにプリントが行き渡っていません」

 ハキハキとした声で手を挙げたのは、隣の席の高谷くんだった。

ぼくは無事にプリントを受け取ることが出来た。前の席の湯元さんと目が合うと、とても嫌な顔をされた。