「親父っ!」
タケルは飛び起きた。はっとなる。見た事のない物でまわりが溢れている。
(ここは…?)
まったく見た事もない所だ。村のとは違い、とても煌びやかに見えるベッド。広い部屋。大きな窓。窓からは明るい日差しがさしている。シャンデリアもかかっている。まあタケル達はシャンデリアという名前は知らないが。どこかのお城のようである事はたしかだ。一体何が行ったのか?イグレが死んだ。もしかしたら、それすら夢だったのかもしれないと思った。いや、そう信じたかった。
「クロス!?」
ふと、自分の手が誰かに握られている事に気づく。クロスは同じベッドの中にいた。タケルの手をギュッと握りしめ眠っている。
タケルはほっとした。軽い寝息をたてているクロスに安心感を覚えた。
(いったいどこだろう?)
タケルは、ベッドから降りようとした。
しかし、ギュッと握られたクロスの手が離そうとしない。
(…。)
タケルはベッドの中に戻った。
「行かないで…お姉ちゃん…。」
寝言なのか?クロスは涙を流し始めた。
「どうした?クロス。」
タケルは慌ててたずねる。しかし、クロスからの返答はない。どうやらまだ夢の中らしい。
しかし、クロスの姉の話がでてくるという事はやはり、あれは現実だったのであろう。タケルは、布団の中に潜り込んだ。タケルは我慢した。だが、涙がやはり流れてくる。夢であってほしかった。目が覚めたらあの家の天井が見える。そうなってほしかった。
「失礼いたします。」
なにやら、綺麗な声の女の声が聞こえ、扉を三回ノックする音が聞こえた。タケルはもっと潜り込んだ。
こつこつこつ。
ヒールの音が、高級な床に響く。ん?二人?
「まだ寝ているのか。」
あの炎の中で聞いたような、ハスキーな声をした女の声が聞こえた。
「無理もない。起きたらいつでも飯が食えるようにしといて。」
「はい、ホワイト様。」
そのハスキーな女の名前がホワイトらしい。様づけで呼ばれている。もしかして高貴な人間なのかもしれない。それにしても口が悪い。タケルは、恐る恐る布団から顔を出した。
「あのう…。」
タケルの遠慮がちにだした小さな声は二人に届いたようだ。
「目がさめていたか!どっか痛い所とかないか?大丈夫か?」