風が木々を揺らし、その音はまるで、海の波の音のように聞こえる。
深い森の中、一部を切り裂いてこの村は存在する。
ここは戦から傷つき、逃れた者達が行き着いた場所。名もなき村である。村という大した人数はいないが、皆が協力して自給自足の生活を送っているのだ。一人、二人と迷いたどり着いた傷を追った人々は、戦の事など忘れ、過去は口に出さずに、新しい人生を歩んでいく。村全体が家族の様であった。どんな心の傷を追っていようと、どんな身なりであろうと、どんな素性の者であろうと、この村の長は受け入れる。
村の中央には川が流れている。その周りにログハウスの様な家がポツポツとあり、畑があり、学校もある。学校と言っても、青空学級で黒板などはないし、教えるのは学問ではない。この地球(アーシェ)の歴史、神々の話、そして力の使い方…など、私達の世界とはまったく別の世界の歴史、文化の勉強だ。
今、まさに授業の真っ最中である。村の子ども達は村長の家の周りに集められ、今日も何か学んでいるようだ。
「さて、今日はこの世界の誕生について復習しようか。」
村の長はドシっと地面に腰を下ろした。長と言ってもまだ四十代くらいだろうか?少し白髪混じりの短髪、しかし鍛えられた筋肉。この村の長であるという風格がある。
「やだよ~。そんなのつまんない!魔法の練習がしたいよ、おじさん!」「それなら剣の方がいいっ!!」
七歳くらいの女の子が口から不満をもたらすと、一斉に皆の希望が、湧き出てきた。
実は子どもが多いのである。たまに森から出る長が、行き場のない子ども達を保護して連れて帰ったりしているからだ。
この村に、親子や兄弟、家族で暮らしている家もあれば、子ども達だけで同じ屋根の下で暮らしている家もある。村長は、助け合って生きていく事の大切さをよく説く。家族がいない者達に家族のあったかさを教えてあげたかったのか…。
話を続けよう。
「魔法がなんで使えるのかちゃんとわかっているのか?お前達は…。魔法をマスターしようと思ったら、そういう事が大事なんだぞ?」
村長は、自分の周りに座っている子ども達、一人一人の顔を見つめた。
「こらっ!!タケル!!クロス!!何を寝てやがるっ!!」
履いてた草履をすばやく二人に投げつける。
「ほえっ?」
この戦国時代を生き抜いていく、物語の主人公達の登場である。