あたしは音の隣に座る。


ああ、何で隣なんだろう。

ドキドキが音に聞こえたら、どうしよう。



「あら、心。食欲ないようね?大丈夫??」
「…うん」


あたしはチマチマとごはんを食べていた。

「熱計ろうか?えっと、体温計どこかしら」


お母さんは席を立って、体温計を探しに行った。



「もしかして、眠れなかった??」

耳元で、音が囁いた。


「っ…違うもん!」
「本当?なんか、目がトロンとしてるよ??」
「え…」

ニコッと音は笑う。


「そうゆう心も、そそられるな…」
「はっ…」


音の顔が近づく。


待って…

こんな所で?!


お父さんもリビングにいるんだよ?!


「クスッ…顔、真っ赤」

音は笑って、あたしの頬に触れた。


「っ…」
「ごはんつぶ。ついてた」
「あ、ああ…」


あたしは下を向く。


「もしかして…キスして欲しかった??」
「なっ…ちがっ…」
「あったあった!体温計!!」


あたしが焦っていると、お母さんがリビングに戻ってきた。


「はい、ちゃんと計りなさい」
「あ、うん…」


あたしは下を向いたまま、頷いて体温計を受け取った。


ピピッ


「平熱…」
「ブッ…」
「ちょ、何で音笑うの!?」
「自分で考えろ」


音は笑ったまま、食器を片付けた。


ああ、成程。

音のせいだから、風邪なわけないよね。


意地悪だなあ…音。


本当、音が分からない。