「楽しみだね、音」

心は箸を止めて、俺を見る。


「そうだね、心」

俺は箸を止めずに、心を見る。



「ほら、心。早く食べちゃいなさい」
「はあい…て、音食べるの早くない!?」
「ごちそうさまー」

俺は食器を片付ける。


「心が遅いのよ」
「早くしろよ、心」


俺は食器を洗いながら、言った。


「はうー…」
「もう。双子なのに、どうしてなのかしらね。」
「お母さん、酷い!!」
「顔はそっくりなのにね」
「ふんっ…」


心はそっぽを向いた。



ズキン…


『双子』

『顔はそっくり』


お母さんのその言葉に俺の胸はズキズキ痛んだ。


「お母さん。食器洗い終わったよ」

それを隠すように、俺は笑顔でお母さんに言う。


「あら、ありがとう」
「ごちそうさまー」

やっと、心が食べ終わった。


「心。食器洗いはいいから。早く行きなさい!」
「分かったー」


心はニコニコ笑いながら、スクバを玄関に置いて急いでバスルームに向かった。


多分。

髪を結ぶのだろう。



幼い時、短かった髪は小学校低学年まではそのままだったけど。


高学年になってからは、髪を伸ばし始めた。


今では背中までかかるくらいまでキレイでサラサラの長い髪になっていた。

それが、俺は大好きだ。


でも、簡単には触れられない。


だって俺達は…

双子だから。