お会計をしようとカバンから財布を出していると、神田くんに止められた。
「お会計は大丈夫だから、行きますよ。」
「え?」
そのまま神田くんは店員さんに軽く会釈をして、スイーッと店を出ていった。
え?もしかして払ってくれたの?
いやいや、私の奢りのはず…。
お店を出て神田くんを追いかける。
「あの、お会計は…?」
「トイレに行ったついでに払っちゃいました。歩いてたら、レジが近くにあったし…。」
「すいません。返しますね。」
「あ、いいです。出世払いで。」
「…。出世、ですかぁ。なるほど。」
「楽しみだなぁ、君の出世が。」
クスクスと笑いながら、早く出世して下さいね、なんて言う彼には本当に驚かされた。
「神田くんって本当に…。」
「ん?なんですか。」
「変な人ですよね。」
「……君は僕とケンカしたいのかな?」
「いやいやいや。したくないです。」


