ここは、あの大富豪の高野田家。

20畳ほどのリビングに、最後に現れたのは、この家の主人、高野田卓三であった。

これで皆揃った。

卓三は足が悪い為、車椅子に座っていた。

その車椅子を押して来たのは、高野田家の長女、オラ子。

その隣にいるのが、オラ子の婿養子の高野田智雄。
ソファーには、次女のしれ未と、しれ未のフィアンセである康雄が、ガムを、クッチャクッチャしながら座っていた。

螺旋階段の近くには、卓三の甥の喜久男が腕を組んでたっており、台所の出入り口には、メイドのマケミも、オボンを持って立っていた。

「これで全員揃いましたな」

ヨレヨレの背広を着た、県警捜査1課の丸越警部が言った。

もう事件も後半に差し掛かり、これから恒例の、名探偵おけつ小五郎の推理ショーが始まろうとしていた。

「それでおけつさん、妻の満子を殺したのは誰なんだ」

卓三が車椅子から、身を乗り出さんばかりに、いきり立った。

「まあまあ、犯人は、おいおいと言うことで、順を追って説明して行きましょう」

リビングの、ほぼ中央位置にいる、おけつ小五郎は皆を見回した。

リビングは静まりかえっていた。

おけつの推理第一声を一同が待った。

「まず第1の満子殺害ですが・・・・」

始まった。

おけつは、見事な推理で最初の殺人事件のトリックを暴いていった。

「そして、第2の密室殺人。これは人の心理をついたトリックだった」

それも、皆を唸らせるほどの完璧な推理で、密室の謎を解いた。

「最後の殺人。使用人の竹谷殺しだが、これは犯人にとっては、当初の計画にはなかったのだ・・・」

皆、身を乗り出し、おけつの推理に聞きいる。

これまた、皆を納得させる、完璧な物だった。

「殺人のトリックについては、解りました。で、おけつ君、肝心の犯人は誰なんです?」

今まで黙って聞いていた、丸越警部も興味津々である。

「そう。この忌まわしい殺戮を犯した犯人、それは・・・」

おけつは、少し語尾を上げた。

皆、次の言葉を待つ。

犯人が名指しされるのだ。

緊張の一瞬である。