リビングのドアを開けると、ちょうどお手伝いのマチ子が料理をテーブルに並べている最中だった。

「きっちゃん、いいタイミング。今呼ぼうと思ったのよ?」

マチ子は、もう数十年来、倉田家の身の周りの世話をしているお手伝いさんだ。

両親が亡くなってからというもの、この広い屋敷には良造ときらら、そしてマチ子の三人で暮らしている。

もちろん、きららが生まれるずっと前からこの家にいるのだから、赤ん坊のときはオシメも換えたほど、幼い頃からきららの面倒を見ている。

生まれる前に父方の祖母を亡くしているきららにとってマチ子は、まさにおばあちゃんがわりのなくてはならない存在だった。

マチ子は料理の腕前もプロ級で、きららはマチ子の作る料理が大好きだった。

今夜も、三人には広すぎるテーブルに、料理が所狭しと並べられている。

「美味しそー! あっ! エビチリ! ラッキー」

「今日はきっちゃんの好きな中華よ」

きららは、数あるマチ子の料理の中でも、特に中華料理が大好きだった。

中でもマチ子の作るエビチリは絶品で、きららの中で五つ星の最上位にランキングされているメニューである。