きららの両親は二年前に事故でこの世を去っていた。

車線をはみ出して走ってきた居眠り運転のダンプカーに正面衝突をされるという、あまりにも不運な死だった。

きららは両親のことが大好きだった。

そして両親もまた、一人娘のきららのことをとてもかわいがっていた。

特に、父親の敬一は、きららに対して手を上げるどころか、怒ったこともほとんどなかったほどきららを愛していた。

――そう言えば、パパ言ってたっけ……

きららは眼を閉じ、父とお風呂に入ったときの会話を思い出していた。

「きららが大人になったら、パパのお仕事を引き継いで、パパの会社の社長さんになってくれる?」

「うん! いいよ、なってあげる」

――まさか、本当にそんなことになるなんて……

――ぐ~……

きららは、自分のお腹の音でふと我に返り、空腹に気がついた。

やはり、考え事をしていても、悩んでいてもお腹は減るものである。

「ご飯できたかな……」

きららは一階のリビングへと降りていった。