「さ、きらら、ここへ来なさい」

良造は、会議でいうと議長席にあたるようなデスクに座り、きららに手招きをした。

ますますわけのわからないきららだったが、とにかく言うとおりにしなければ、と、顔をほてらせながら小走りで良造の座るデスクまで行き、横に座った。

改めて前を見ると、いかにもえらそうな割腹のいいオジサンばかり、それがみなこちらを見ている。

きららは恥ずかしくなり、顔を赤らめてうつむいてしまった。

そんなきららを横目に、良造が話し始めた。

「諸君。待たせてすまなかった。諸君に集まってもらったのは、ほかでもない。実は、ワシは今月で会社を退くことにした」

「社長? それはまことですか?」
 
オジサン達は一斉に良造を見た。

「おじいちゃん? ……」

きららも、いきなりの展開に目がテンになった。

良造は、構わず話を進める。

「ああ、もうワシも年じゃ。本当ならばとっくに息子にまかせて悠々自適の生活をしておったはずじゃがな……まあ、それはいいじゃろう。それでな、後任のことじゃが、経営のほうはお前達生え抜きの者たちに任せる。次に社長じゃが……」

良造はきららのほうに目をやった。

きららは良造がこっちを見ているのに気付き、目線をあわせた。

良造はきららの肩を抱き、にっこりと微笑むと、再び前を向いた。

「次期社長は、このきららになってもらう」