「里穂」


「修斗」


畳の部屋に敷かれた布団の上で、里穂はダルそうに横になっていた。


顔も赤く、苦しそうに咳をする。


「大丈夫か?」


ポンポンと頭をなでてやると、苦しそうな顔が一瞬だけ緩んだ気がした。


「頭痛いよ、修斗」


「うん。母さんが氷枕持ってきてくれるから」


「ふん」


声にならないような声で返事をすると、里穂はスッと目を閉じた。


「寝ろ、里穂」


「うん」


手をつないでとせがまれるので、ギュッと握ってやった。


今も昔も、俺は医者じゃないから風邪を治してやることは出来ない。


でもこのとき、弱ってるときくらいうんと甘やかして、優しくしてやろうと思った。