君の隣～番外編～

「余裕なんてあるわけないだろ」


ボソッと呟いた言葉に、高橋がハハって笑った。


「まあ、天然小悪魔の彼女を持つと大変だわ。そりゃ、余裕もなくなるよね」


にやって顔をして、俺を見る高橋。


里穂が天然小悪魔なら、人の痛いところをついてくる高橋はただの小悪魔だ。


いや、子はいらないかも。


「とにかく行こうよ。ほんとに里穂、取られちゃうかもよ？」


そう言って高橋は、俺をグイっと引っ張った。


「里穂～！」


大きな声を出して高橋が里穂を呼ぶと、まだ男と話していた里穂が不思議そうに周囲を見回した。


そして俺たちを見つけると、パッと笑顔を咲かせる。


「修斗、綾香！」


ちょうどテントの前に到着した俺たちと同時に、里穂がテントの中から出てきた。


「なんでいるの？」


不思議そうな顔をしながらも、嬉しそうに俺に抱きついてくる。