そう言って里穂の手からフォークを奪った修斗君は、オレンジをひとつ刺して里穂の口元に持っていった。


それを恥ずかしがることなく、パカッと口を開けて受け入れる里穂。


「あんたたち、やり慣れてるわね、それ」


私の言葉に、修斗君はハッとしたような顔をして、慌てて里穂にフォークを握らせた。


里穂だけは、私の言葉に口をもぐもぐさせながら「なに?」とでも言いたそうな顔をしていたけど。


「ねえ、里穂。修斗君って、いつも里穂に食べさせてくれるの?」


「そんなことないよ」


「でも、すごく自然に食べさせてたけど?」


そう言って今度は修斗君の方を見ると、明らかに動揺して顔を真っ赤にさせていた。


「うん、分かった。これが二人にとって、普通のことなんだね」


「おい、高橋!勝手に話をまとめないでくれ」


そう言って修斗君は、大げさにため息をついた。


修斗君に促されて、なんとか里穂は果物を完食。


そしてまた机に突っ伏して、今度は静かに寝息を立て始めた。


そんな里穂に、修斗君は授業で使っているファイルで扇いで風を送る。