「ほら」


ストローを刺したジュースのパックを、里穂に差し出す修斗君。


ちゃんとストローを刺して渡すところが、里穂に甘い修斗君らしい。


「ん、起きる」


ゆっくりと起き上がった里穂の顔は、相変わらず真っ赤。


その顔をうちわで扇いであげると、「ありがと、綾香」って言って、笑顔を見せてくれた。


もうね、この笑顔でその辺んの男子はコロッとやられちゃうのよ。


「ん、全部飲めよ」


「うん。ありがとう、修斗」


今度は、修斗君用に見せる笑顔をする里穂。


里穂って、絶対無意識なんだけど、修斗君とその他諸々に見せる笑顔の度合いが違うんだよね。


そんな里穂を見て、修斗君は優しく里穂の頭をポンポンってなでてるし。


なんかね、二人の周りだけ、空気が甘くて甘くて。


ただでさえ暑い教室なのに、里穂たちのせいで余計に温度が上がってる気がする。


その空気に耐えられなくなって、里穂を扇いでいたうちわを自分に向けた。