「里穂姉、なんか飲む?」


それでも恥ずかしいのか、急に立ち上がって私に背を向ける隼斗君。


その姿に笑いそうになりながら、りんごジュースをお願いした。


「ねえ、隼斗君」


「ん?」


キッチンに向かう隼斗君の背中に声をかけると、立ち止まってこっちを振り返った。


「隼斗君って今、夢とか目標ってあるの?」


「うん、あるよ。俺が部活で受け持った子たちを、全国大会に連れて行って優勝させること」


そう言って笑顔を浮かべた隼斗君は、キッチンに姿を消した。


「なんだ、全然大丈夫じゃん」


落ち込んだって、悩んだって、夢や目標があれば大丈夫。


途中で立ち止まったって、夢や目標があれば、また前に向かって歩き出せるから。


夢や目標は、人を成長させてくれるから。


守らなければいけなかった義弟は、いつの間にか大人の道を歩いていた。


きっとこれから隼斗君は、立派な教師になっていくんだろう。