「たしかに修斗は、サッカーで結果を残してきたよ。きっとこれからも、結果を残し続けると思う。隼斗君が比べたくなる気持ちも分かる。でも隼斗君、一個だけ教えてあげる。人と自分を比べても、いいことはないよ」


「里穂姉」


「私もね、仕事をしてるとき、先輩と自分を比べて、いっぱい落ち込んだ。なんで自分は出来ないんだろうって思った。経験の差があるから、そんなこと思う必要ないのにね」


私の言葉に、隼斗君がコクンと頷く。


「比べるって、結構疲れるんだよね。そんなことに力を使うなら、どうしたら自分が成長出来るかってほうに頭を使った方がいいと思わない?比べる時間があるなら、勉強しようよ!その方が自分のためにもなるし、隼斗君が教えてる生徒のためにもなるんじゃない?」


そう言うと、隼斗君はハッとしたように顔を上げて私を見た。


「どうかした?」


「ううん。ただ、今里穂姉が言ったことって、俺一番出来てなかったことだなって思って。なにか嫌なことがあると落ち込んで終わってた。そうだよな。出来ないこととか、分からないことがあったら、勉強すればいいんだ」


何かの答えを見つけたように、隼斗君の顔に笑顔が浮かぶ。


「ありがと、里穂姉。俺、頑張るわ」


「うん」


「里穂姉と話してちょっとスッキリした」


「そっか。よかった」


隼斗君の頭を、優しくなでる。


「やめてよ、恥ずかしい」って言いながらも、隼斗君はちょっとだけ笑顔を見せて私に頭をなでられていた。