「でもさ、仕事で上手くいかなかったときとか、心に余裕がないときとかさ、そう言われるのが苦痛で」


「そっか」


「今も仕事であった嫌なこと思いだしちゃって。体動かしたらちょっとはスッキリするかなって思って。一人でバレーしてた」


そう言って隼斗君は、ちょっと寂しそうに笑った。


そんな隼斗君の頭を、またぐちゃぐちゃとなでる。


今度は、振り払われなかった。


「仕事で嫌なことがあると、どうしても兄ちゃんと自分を比べちゃうんだ。兄ちゃんはあんなに出来るのに、どうして自分は出来ないんだろうって。俺は兄ちゃんみたいに才能があるわけじゃない。バレーで一番になったわけじゃないし。なんか、なにもかも中途半端っていうか」


「そうかな?隼斗君だって、先生になりたいって夢を叶えたでしょ?十分すごいと思うけどな」


「でも、先生の仕事が俺に合ってるか分かんないし。楽しいって思うこともあるけど、それ以上に悩むことが多いし」


そう言って隼斗君は、肩を落とす。


「まだ働き始めて2、3年でしょ?悩んで当たり前だよ。仕事なんて楽しいばかりじゃないし。私だって、隼斗君と比べたら悪いかもしれないけど、それなりにいっぱい悩んだよ」


「うん。そうだけど……」


「それに、修斗と自分を比べない!」


「分かってる!でも……」


そう答える隼斗君の頭を、またなでる。