「あれ?廉じゃん」


ブンデスリーガがウインターブレイクに入り、先日一時帰国をした俺。


今日は地元のテレビの収録があり、今はその帰り。


車でテレビ局まで行こうと思ったけど、久しぶりに日本の公共交通機関に乗りたくて、電車やバスを使ってテレビ局に向かった。


里穂には、「修斗だってバレたら大変だよ」って言われたけど、まあバレなかったと思う。


テレビの収録も順調に終えて、実家のある最寄り駅から家に向かって歩いていると、ふと昔よくサッカーをしていた公園に行きたくなって、足をそっちに向けた。


この公園は、高校時代、なにか嫌なことがあったり動き足りなかったりしたときに、よく使っていた。


もちろん、里穂と一緒に。


その公園に着いたところで、誰かが一人でサッカーをしているのが目に入った。


もう辺りは暗くなっていたので、目を凝らしてその人を見ると、里穂の弟の廉だった。


廉は大学卒業後、高校で体育の先生をしている。


ただ実家からは通えない高校が勤務地だったから、その高校の近くで一人暮らしをしている。


サッカー部の副顧問をしているけど、年末年始の休みに入ったから、今は実家に戻ってきているらしい。


「相手してやろうか?」


一人でボールを蹴っている廉に声を掛けると、俺の声にビックリしたのか、廉はハッとしたように顔を上げた。