「着いたわ、ドイツ」


空港に着いて、パッとサングラスを外す。


「女優気取りですか?安藤さん」


「ほんとにかわいくなわね。あんたは」


「はいはい。行きますよ」


そう言って後輩の田中は、私を足早に抜いて空港の出口に向かった。


「たく、まあいいわ」


ため息をついて、田中の後姿を追う。


空港に出てすぐ、タクシーを拾った。


私安藤さおり、地方の新聞社でスポーツ欄を担当している新聞記者。


年齢は、まあ言わなくてもいいわよね。


今日はとあるサッカー選手の取材に、後輩の田中とはるばるドイツまでやってきた。


「ボアシルの練習場まで」


「はい、分かりました」


タクシーの運転手に声をかけると、すぐに出発した。