里穂をはじめて抱いたのは、俺が二十歳になった年。


それまでそういうことをする雰囲気がなかったわけではない。


ただ、お互い生活が変わって落ち着いたころが、俺が二十歳になったころだったってこと。


本当に、自然だった。


恥ずかしいとか、戸惑いとか、そんな感情一切なく、自然に抱き合っていた。


「不思議だよな」


あのときはお互いの気持ちがひとつになった、本当に不思議な感覚に襲われた。


コップを取り氷を入れ、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを注ぐ。


よく冷えた水を飲み干すと、渇いていた喉が一気に潤った。


「少し注いどくか」


もしかしたら里穂が起きて飲むかと思って、もう一度コップに水を注いでベッドに戻った。


コップをベッド近くのテーブルに置き、里穂を起こさないようそっとベッドに座る。


「綺麗な肌してんな」


布団から少し出た肩に、指を滑らせる。


普段は「かわいい」という言葉が似合う里穂だけど、こういうときは大人の雰囲気を醸し出す。