「やっぱり。修斗のこと、大好きって言ってたぞ」


「はあ?そんなこと言ったんですか?」


思わずため息が漏れる。


里穂は大して凄いことを言ってるという自覚はないんだろうけど、人からそういうことを聞かされるこっちはかなり恥ずかしい。


「本当、お前の彼女かわいいな。見た目も、性格も」


そう言って先輩の一人がガラス越しに里穂を見ようとしたから、その目線を遮るように体をちょっと動かす。


「そんな警戒しなくたって、取ったりしないから」


その言葉に、頬が熱くなる。


「まあ、お前も彼女の前ではただの男だってことだな」


「デレデレして、サッカーしてるときの姿しか知らないファンはビックリするだろうな」


「もうやめてください」


そう言って照れる俺を見て笑った先輩たちは、「お疲れ」と言って自分の車に戻って行った。


しばらくこのネタでからかわれると思うと、ため息が漏れる。


窓越しに里穂を見ると、こっちに気づいた里穂がニコっと笑う。


その笑顔を見て、「もうここには連れて来ないぞ」と思った夏の暑い日。






……END