尊敬する日本代表の先輩も所属していて、俺は迷うことなく返事をした。


「まあ、自分の実力がどれくらいか試してこい」


「はい」


「詳しいことはスタッフが説明するから。じゃあ、お疲れ」


最後にそう言って、監督はミーティングルームを出て行った。


それから数週間後、Jリーグの試合が他の大会で中断させる1週間の間に、俺はドイツに旅立った。


今回は、移籍とかは関係なく、ただ単に俺を直接見てみたいということで声をかけてきてくれた。


練習に参加出来るのは3日間。


実は今回の練習参加は、本当にタイミングがよかったとしか言い様がない。


Jリーグが中断されるのは他の大会の決勝があるからで、俺が所属しているFCウイングは準決勝で負けていた。


もし決勝に残っていたら俺は間違いなくチームに残ったし、チームスタッフだって練習参加して来いとは言ってくれなかったと思う。


だからこれはチャンスだと思って、自分の肌で世界がどういうところなのか、俺には何が足りないのか、しっかり勉強してこよう、そう決意していた。


ドイツの空港からタクシーに乗り、スタジアムに向かう。


正直ドイツ語は、単語をいくつか覚えてきただけ。


英語はこの先海外移籍をしても世界共通語だからなんとか通じるだろうと思い、英会話教室に通ったり独学で勉強しているから、少しは話せるし理解できる自信はある。