「実はこの韻って力は、使い方によっては凄い危険な物なんだよ」

「危険・・・?」

書いた言葉が危険なんて、まったくもって意味不明だ。


「そうだ。
中断しながら読むと、あまり効果はないかも知れないが、一気に読むと、韻特有のリズムによる催眠効果があるんだよ」

え?

「サブリミナル効果とか知ってるか?
まあ言ってみれば、そんな類のシロモノだな」

え――!?


「要は、この小説には何らかの催眠効果がある可能性が高いって事だ。

うちの大学の教授にも見せたんだが・・・」

この小説に催眠効果が?


もしそうだとしたら、あの踏切りでの事故も説明できる可能性がある。

あの時の愛美も、催眠術にでもかかった様に、私の声なんてまるで聞こえていなかった。


「・・・――という訳だ。

おい千里、折角説明してやってんのに、聞いてんのか?」

「あ、うん聞いてるよ。それで、あの小説にはどんな催眠効果が?」


私は真剣な眼差しで、兄の目をジッと見詰めた。