複雑な心境のまま帰宅すると、兄がちょうど大学から帰ってきた所に遭遇した。
「おう千里。
この前のケータイ小説な、あれ面白かったぞ」
「はあ?」
妹が大変な時に、何をあんな恋愛小説なんかを一生懸命読んでるのよ。ムカつく!!
考えている事を察したのか、兄は笑いながら私の頭をポンと叩く。
「お前、何か勘違いしてるだろ?
まあ良い、詳しい事は中で話そう!!」
兄が一体何を言おうとしているのか、全く分からなかったが、とりあえず後に続いて家の中に入った。
兄はリビングの床に「ヨイショ」と座り、面白いと言った理由を話し始める。
いつもの長い講釈を聞かされるものだと思いながらも、私は目の前のソファーに座った。
この時の私は、これから始まる兄の話が事態を一変させるとは、予想だにしていなかった――