普段目立たないのに、音楽に妙に詳しい。
あ、そうか――!!
そういえば、岸本の両親は有名な音楽家で、全国で演奏していると聞いた事がある。
人は見掛けによらないものだ。
それで、妹の看病を岸本がしているのか・・・
全ての授業が終わると私はホームルームを無視し、直ぐに走って教室を出た。そして校門の外に待機し、ジッと中川さんが学校から出て来るのを待った。
それから20分程過ぎた頃、私の目の前を中川さんが通り過ぎていった。
よし、中川さんは1人だ。
私は直ぐに後を追い、校門から三春駅方面に300メートル程行った所で背後から声を掛けた。
「な、中川さん!!」
中川さんはその場で立ち止まり、振り返ると怪訝そうな表情で私を見た。
「私に何か用?」
振り向いた顔にはクマができていて、全く生気が感じられない。身体に力が入ってない様に見える。



